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Fivetranについて

更新日:4月17日



  1. はじめに


近年、企業におけるデータ活用の重要性が高まる中、「いかに速く・正確に・低コストでデータを統合するか」が大きな課題となっています。特に、SaaSやクラウドサービスの利用拡大により、社内外に散在するデータを一元的に管理・分析する基盤のニーズは急速に高まっています。このような背景の中で注目されているのが、データ統合自動化サービス「Fivetran」です。


▼本記事の目的

本記事では、Fivetranがどのような課題を解決し、どのような特長を持つのかを、データエンジニアリングやデータ分析に関心のある方向けに、以下の観点からわかりやすく解説します:

  • Fivetranの基本概要と特徴

  • 対応データソース・ターゲット

  • 他ツールとの比較や導入メリット

  • ユースケースや導入ステップ

  • モダンデータスタックとの関係


▼こんな方におすすめ

以下のような課題や関心を持つ方に役立つ内容です:

職種

想定する課題や関心

データエンジニア

日々のデータ連携やETL / ELT処理に時間がかかっている/メンテナンス工数を減らしたい

データアナリスト

分析用データが整うまでのリードタイムが長く、機会損失が出ている

データ利活用担当

多様なSaaSやDBからのデータ取得を効率化したいが、システム部門に頼りがち



  1. Fivetranの基本概要


Fivetranは、クラウドベースのデータ統合プラットフォームであり、各種データソースからDWH(データウェアハウス)などへのデータパイプライン構築を自動化するサービスです。ETLではなくELT(Extract → Load → Transform)の思想に基づいて設計されています。


▼サービスの基本的な役割

ステップ

説明

① Extract(抽出)

SaaS(例:Salesforce、Google Ads)やDB(例:MySQL、PostgreSQL)からデータを定期的に自動で抽出

② Load(ロード)

変換せずにそのまま、指定のクラウドDWH(例:BigQuery、Snowflake、Redshift)にロード

③ Transform(変換)

DWH上でSQLを用いて必要な加工を行う(Fivetran自身では行わないが、dbtとの連携を想定)


▼主な機能

  • ノーコード接続:GUIベースで主要なSaaS/DBと簡単に接続

  • スキーマ変更の自動追従:ソース側のカラム追加・削除・型変更を自動検出・反映

  • 定期的な同期:1時間〜5分間隔でのデータ更新設定が可能(プランによる)

  • セキュアな転送:暗号化通信・アクセス制御の標準対応

  • マネージド型:サーバー管理やジョブ運用不要(SaaSとして完結)


▼主な連携先

分類

主な対象

SaaSアプリ

Salesforce、Google Analytics 4、Google Ads、Facebook Ads、Zendesk、HubSpot、NetSuiteなど

データベース

MySQL、PostgreSQL、Oracle、SQL Server、MongoDBなど

DWH(出力先)

BigQuery、Snowflake、Redshift、Databricks、Azure Synapseなど

ファイル

CSV、Excel、Google Spreadsheets(定期抽出)

※ 対応コネクタは500種類以上(公式サイトにて随時更新)


▼ELTツールとしての位置付け

Fivetranは「Extract/Load特化型」であり、以下のような思想で設計されています:

  • 変換処理はDWH上で行うのが効率的

  • 抽出・ロードを「完全自動」で提供し、メンテナンスを不要にする

  • SQLベースでの変換処理をdbtなどと分離管理することで開発の透明性を保つ



  1. Fivetranの主な特徴


Fivetranは「運用負荷の極小化」「変更に強い仕組み」「豊富なコネクタ」などの点で、他のETL / ELTツールと一線を画しています。このセクションでは、Fivetranの主要な特徴をカテゴリ別に整理します。


▼特徴①:フルマネージド型データパイプライン

  • インフラ管理不要:サーバー構築・運用・バッチ制御不要(SaaSとして提供)

  • 接続・同期設定はGUIで完結:数クリックで接続可能

  • 障害検知・リトライ・監視も自動対応

※特に小規模〜中規模チームにとって、「データ連携のDevOps負荷削減」が最大のメリットとなります。


▼特徴②:スキーマ変更への自動対応(Schema Drift Handling)

スキーマ変更

対応内容

カラムの追加

自動で新カラムを認識し、対象テーブルに追加

カラム名の変更

新しいカラムとして扱う(変更履歴保持)

カラム削除・非表示

明示的にマッピングを管理可能(デフォルトでは保持)

※データソース側の改修頻度が高いSaaS系データにおいて、「壊れない連携」が実現されます。


▼特徴③:差分同期(Incremental Load)

  • 初回はフルロード、それ以降は差分のみ取得(CDC等)

  • 多くのソースでは変更日時ベースやトランザクションログベースの差分検出

  • データ量・API制限・レイテンシの最適化に寄与

※フルロードでAPI呼び出しを繰り返すツールとは異なり、コストと効率性の両立が可能です。


▼特徴④:豊富なコネクタ(公式対応)

  • 常時メンテナンスされた500種以上のプリビルトコネクタ

  • ソース/ターゲット共に拡充中(最新は公式connector catalog参照)

  • 一部はEnterpriseプラン限定、だが標準コネクタでも多様な業務領域をカバー

※SalesforceやGoogle Adsなどの複雑なSaaSにも対応しており、導入工数を最小化できます。


▼特徴⑤:高セキュリティ・高信頼性設計

  • 通信:TLS暗号化、VPN/SSH接続対応

  • アクセス制御:RBAC対応、ログ監査機能

  • 各種認証:OAuth 2.0、APIキー認証、証明書認証など

※企業内セキュリティポリシーに準拠した運用が可能。


▼特徴⑥:柔軟な変換設計(Transformは分離)

  • FivetranはTransform処理を担わない(非侵襲型)

  • SQLベースでdbt(Data Build Tool)と連携し、DWH上で変換を実施

  • 開発と運用の責任分離が明確になる構成

※ELT思想のメリットを最大限活かした設計。再利用性やCI/CDにも強い。


▼特徴⑦:料金体系もシンプル

項目

内容

従量課金制

同期対象の「行数(Monthly Active Rows)」ベースで課金

サービス提供

コネクタ数に制限なし(プランによって差分あり)

フリートライアル

コネクタ数に制限なし(プランによって差分あり)

※利用規模に応じて段階的に導入しやすい仕組み。



  1. 対応データソースと連携先


Fivetranは500種類以上の公式コネクタを提供しており、SaaS、データベース、ファイル、イベントログ、クラウドストレージなど多様なソースに対応しています。また、出力先としては主要なクラウドDWHやデータレイクに対応しています。


▼主なデータソースカテゴリと代表例

カテゴリ

代表的な対応ソース

用途の例

SaaSアプリケーション

Salesforce、Google Ads、Facebook Ads、HubSpot、Zendesk、NetSuite

マーケティング、営業、サポート、会計データなどの統合

Web・広告系API

Google Analytics 4、LinkedIn Ads、Twitter Ads、TikTok Ads、Klaviyo

ウェブトラフィック・広告施策の分析

データベース

MySQL、PostgreSQL、SQL Server、Oracle、MongoDB、MariaDB

基幹システム・業務DBからのデータ抽出

ファイルベース

CSV、Excel、JSON、Google Sheets

手動管理データやログファイルの取り込み

イベントストリーム

Segment、Mixpanel、Amplitude

ユーザー行動・イベント分析

クラウドストレージ

Amazon S3、Google Cloud Storage、Azure Blob Storage

ログ・大量データの一括取込用

※SaaS系だけでなく、オンプレやクラウドDB、非構造データにも対応できる点が特長です。


▼主な連携先(データ出力先)

FivetranはELT思想のもと、データをそのまま以下のDWHとデータレイクにロード可能です。

タイプ

対応プラットフォーム

クラウドDWH

Google BigQuery, Snowflake, Amazon Redshift, Azure Synapse, Databricks SQL Warehouse

データレイク

Amazon S3, Google Cloud Storage(※一部Connector限定)

BI向け

Looker(dbt連携込み)、Tableau(直接ではなくDWH経由)など

※出力先がDWHに限定される設計であるため、「DWHを中心としたモダンデータスタック」との相性が非常に良いです。


▼コネクタの種類と更新頻度

  • Standard Connector:公式サポートされ、ほぼ全プランで利用可能

  • Enterprise Connector:複雑なAPIや特殊な仕様に対応。Enterpriseプラン限定

  • Custom Connector:REST API経由で自作も可能(※別途開発が必要)

※コネクタはFivetranが日々アップデートしており、最新情報は公式Connector一覧で確認できます。


▼更新頻度とデータ同期の柔軟性

項目

内容

同期間隔

プランにより5分〜1時間間隔で設定可能

初回同期

フルロード、その後は差分同期

同期トリガー

時間ベース(スケジューリング)/APIイベントトリガーなど



  1. ELTアプローチとFivetranの強み


Fivetranは、従来のETL(Extract → Transform → Load)ではなく、ELT(Extract → Load → Transform)という設計思想を採用しています。このアプローチがFivetranのサービスにどのような価値をもたらしているのかを解説します。


▼ETLとELTの違い

項目

ETL

ELT

処理順序

抽出 → 変換 → ロード

抽出 → ロード → 変換

変換の実行場所

ミドルウェア上

データウェアハウス上

向いている用途

データ量が少なく、定型的な処理が多いケース

柔軟な変換や大規模データ処理が求められるケース

主な課題

変換処理が複雑になるとパフォーマンス低下、保守困難

初期のストレージ量が多くなる可能性

※ELTは、近年のDWH(BigQuery, Snowflake など)の性能向上により主流になってきている手法です。


▼FivetranがELTを採用する理由とメリット

Fivetranは、データの抽出とロードを担当し、変換(Transform)はDWHやdbtなど他ツールで行うことを前提としています。


主なメリット:

  • DWHのパフォーマンスを活用

    • 変換はDWH側のスケーラビリティに依存でき、処理性能が高い

  • 処理の透明性と再現性

    • SQLベースで変換処理が記述されるため、レビューやバージョン管理が容易(特に dbt との連携により実現)

  • 柔軟な変換ロジック設計

    • 複雑なビジネスルールや集計処理も、DWH内でSQLとして定義可能

  • システム責任の分離

    • 抽出・ロードはFivetran、変換はデータチームが制御。トラブルシューティングが明確になる


▼dbtとの連携(Transformのベストプラクティス)

Fivetranはdbt Cloud / dbt Coreとの統合に対応しており、以下のようなパイプライン構成が可能です:


SaaS・DB → Fivetran → BigQuery/Snowflake → dbt → BIツール(Looker, Tableau)


  • dbtのモデル定義をFivetran上からトリガー実行可能

  • スケジュール同期と連動した自動リフレッシュ処理が可能

  • データガバナンスや文書化、テストフレームワークも構築しやすい

※「変換はDWH上で」「管理はコードベースで」の思想を推進


▼こんな場面にELT + Fivetranは有効

シーン

解説

複数SaaSやDBのデータを高速で統合したい

各種コネクタとCDCにより、最小限の設定でデータ統合が可能

自社特有の変換ロジックを柔軟に定義したい

DWH + dbt によるSQL変換で自由度が高い

ETLメンテナンス工数に悩んでいる

ELT+Fivetranにより、運用コストが大幅に削減される



  1. 実際のユースケース


Fivetranは業種や部門を問わず、さまざまな企業においてSaaSやDBのデータをDWHに自動連携する基盤として活用されています。ここでは代表的なユースケースを、目的別に整理して紹介します。


▼ユースケース①:マーケティングデータの統合分析

概要

広告チャネル・解析ツールのデータを統合し、ROI分析や施策評価を高速化

連携例

Google Ads、Facebook Ads、Google Analytics 4、HubSpot

出力先

BigQuery / Snowflake など

効果

手動データ収集の削減、リアルタイムな広告効果の可視化、BIツールによる定期レポート作成

※マーケティング部門が週次・日次での分析を即時に実施可能に。


▼ユースケース②:SaaS業務データの統合ダッシュボード

概要

CRM、会計、CSツールなど部門別SaaSを統合し、全社KPIを可視化

連携例

Salesforce、Zendesk、NetSuite、Stripe

出力先

Redshift / Databricks SQL Warehouse など

効果

部門ごとのサイロを解消し、横断的なKPIモニタリングと早期意思決定を実現

※経営層やオペレーション部門向けの全社統合ダッシュボードに有効。


▼ユースケース③:ECサイトの顧客行動・購買データ分析

概要

商品データ、購買履歴、Web行動ログなどを統合し、LTVや離脱率を分析

連携例

Shopify、Google Analytics、MySQL(EC基盤)

出力先

BigQuery / Snowflake

効果

マーケ・商品・開発が共通データを活用し、意思決定の一元化とパーソナライズ改善を推進

※顧客単位の行動トラッキングやセグメント分析にも活用。


▼ユースケース④:プロダクトログの分析基盤構築

概要

アプリ/サービスのログをDWHに蓄積し、ユーザー行動分析やA/Bテストに活用

連携例

Segment、Mixpanel、MongoDB、Amplitude

出力先

Databricks / Redshift

効果

データチームがSQLで柔軟にクエリ・分析でき、アジャイル開発に貢献

※プロダクトマネージャーやUX担当による迅速な改善ループに直結。


▼業種別ユースケースまとめ

業種

主なデータソース

活用内容

BtoB SaaS

Salesforce、HubSpot、NetSuite

売上予測、商談分析、顧客セグメント

小売・EC

Shopify、Google Ads、POS、GA4

LTV・購買分析、キャンペーン評価

メディア

Google Ad Manager、YouTube、Segment

コンテンツ閲覧傾向、広告効果分析

金融・FinTech

MySQL、Salesforce、Stripe、Redshift

顧客リスク評価、KPIモニタリング



  1. 他ツール(Stitch, Airbyte, Informatica等)との比較


Fivetranは、ノーコードでのデータパイプライン構築を強みとするSaaS型ELTツールですが、同様の目的を持つツールとしてStitchAirbyteInformatica Cloud Data Integrationなどが存在します。このセクションでは、それぞれの特徴や使い分けの観点を整理します。


▼比較の観点

以下の観点で各ツールを比較します:

  • 提供形態(SaaS / OSS / ハイブリッド)

  • コネクタ数・対応ソース

  • メンテナンス性・自動化度

  • カスタマイズ性

  • 運用負荷

  • エンタープライズ対応(監査・セキュリティ等)


▼機能・特性の比較表(2025年4月時点)

ツール名

提供形態

主な特長

コネクタ数

カスタマイズ性

運用負荷

対象ユーザー層

Fivetran

フルSaaS

フルマネージド/自動同期/dbt連携

500以上

低(固定変換)

非常に低

ビジネスユーザー〜エンジニア

Stitch (Talend)

SaaS

軽量/中小向け/コネクタ限定あり

約100

中小企業/データアナリスト

Airbyte

OSS+Cloud

OSSとして無料利用可/コネクタ自作可

350以上

高(Pythonで拡張可)

中〜高

エンジニア/内製チーム

Informatica CDI

SaaS、 ハイブリッド

ETL中心/GUI強力/旧来型からの移行に強み

150以上

中(GUI+コード)

エンタープライズ向け


▼Fivetranが優位なケース

  • 運用コスト・メンテナンスを極力抑えたい

  • dbtやモダンDWHと統合してELT構成をとりたい

  • セキュリティ・監査・SLAが重視される企業利用

  • 社内にELT実装の専門知見が少ない


▼他ツールが適しているケース

ツール

適している状況

Stitch

データ量・連携数が少なく、SaaSで簡易に構築したい場合(費用重視)

Airbyte

内製で拡張したい/オンプレや特殊APIと連携したい/開発者が多い

Informatica

既存のETL基盤からの移行/GUIで複雑なETL処理が必要な場合/統合管理が必要な大規模企業


▼コスト面の補足

  • Fivetran:行ベースの従量課金(MAR:Monthly Active Rows)で可視性高いが、ボリューム次第で高額になる可能性も

  • Airbyte OSS:利用は無料だが、インフラ・運用は自前で整備が必要

  • Informatica / Stitch:コネクタ数やAPI制限によって段階的に価格が上がるプラン構成



  1. 導入のメリットと注意点


Fivetranは、特に「構築・運用コストの削減」と「迅速なデータ統合」を求める企業にとって有力な選択肢です。一方で、運用設計の自由度やコスト構造など、事前に把握すべき注意点も存在します。


▼導入メリット

観点

内容

初期構築が圧倒的に速い

ノーコードで主要コネクタを即接続。構築開始から数日で分析可能な状態に到達できるケースも多い。

運用コストが極小化できる

スケジューリング・スキーマ変化への自動追従、リトライなども自動化。運用チームの負担を大幅に削減。

信頼性の高いデータ転送

通信の暗号化、ロールベースのアクセス管理、監査ログなど、エンタープライズ水準のセキュリティに準拠。

dbt連携との親和性

Fivetranでロード → dbtで変換、という構成がELTベストプラクティスとして定着しやすい。

SaaS連携の拡張性

SalesforceやGoogle系など、API変更の多いサービスでも安定運用できる設計。


▼導入時の注意点

項目

説明

コスト構造に注意(MAR課金)

読み込み対象の「アクティブ行数(Monthly Active Rows)」ベースで課金。大量データや高頻度更新では費用が増加しやすい。

カスタム変換が制限される

Fivetran自身は変換機能を持たないため、複雑なデータ整形はdbtやDWH側で実装する必要あり。

対応外のソースは自作が必要

非対応APIやオンプレDBはCustom ConnectorやReverse ETL連携で対応する必要があるが、やや手間がかかる。

ブラックボックス感

完全自動化ゆえに、内部処理の詳細が見えにくく、エラー調査に慣れが必要なケースも。

行単位での更新コントロールは不可

「このレコードだけ同期したい」「このIDは除外したい」といった細かい制御はFivetranの範囲外(DWH側で対応)。


▼Fivetranが特に効果を発揮するケース

  • SaaSやクラウドDBを多く使っており、それらを統合したい

  • 開発リソースを割かずに、短期間でデータ分析基盤を立ち上げたい

  • スキーマ変更やAPI更新の頻度が高く、保守が煩雑になっている

  • dbtなどと組み合わせてELT構成を設計したい



  1. Fivetranとモダンデータスタックの関係


モダンデータスタック(Modern Data Stack:MDS)は、近年のクラウドネイティブなデータ活用の流れに沿った技術群の総称であり、以下のようなレイヤーに分かれています。

Fivetranはこの中で「データ統合(Ingestion)レイヤー」を担い、SaaS・DB・ファイルなど多様なソースからDWHへのデータ連携を自動化する役割を果たしています。


▼モダンデータスタックの全体像とFivetranの位置づけ

  • データソース

    • SaaS、RDB、API、CSV、ウェブのログなど

  • データ統合(Ingestion)

    • Fivetran、Airbyte、Stitch

  • データウェアハウス(DWH)

    • BigQuery、Snowflake、Redshift、Databricksなど

  • データ変換・整形(Transform)

    • dbt(Data Build Tool)

  • ビジネスインテリジェンス(BI)

    • Looker、Tableau、Power BI、Looker Studioなど


▼各レイヤーでの役割整理

レイヤー

主な役割

主なツール

Ingestion(取り込み)

ソースからDWHへデータを抽出・ロード

Fivetran、Airbyte、Stitch

DWH(保存・集約)

データを格納し、分析しやすい形に保持

BigQuery、Snowflake、Redshift、Databricks

Transform(整形)

データをクレンジング・モデリング・集計

dbt(SQLベース)

BI・可視化

分析者・経営層に向けたレポート・分析

Looker、Tableau、Power BI、Looker Studio

※Fivetranは「データの搬入専任」ツールとして、スキーマ変更・差分同期などを完全自動で処理し、他レイヤーとの明確な分業が可能になります。


▼Fivetranがモダンデータスタックに適している理由

観点

適している理由

DWHとの親和性

ELT構成により、BigQueryやSnowflakeと高い統合性を持つ

dbtとの連携

dbt Cloud / Coreと公式に連携し、変換処理をトリガー可能

拡張性

LookerやTableauと連携したBI基盤にもスムーズに接続

運用自動化

スケジューリング、エラー検知、スキーマ追従が自動化されており、パイプライン管理が不要


▼導入パターン例

フェーズ

使用ツール構成例

PoC・初期構築

Fivetran → BigQuery → Looker

分析強化期

Fivetran → Snowflake → dbt → Tableau

拡張期(多拠点・多事業部)

Fivetran + Airbyte(自作コネクタ) → Databricks → dbt Cloud + BI統合



  1. 実際の導入・運用のステップ


Fivetranの導入は、他のETL / ELTツールと比較して圧倒的にスピーディかつシンプルです。SaaS型のためインフラ準備が不要で、コネクタ接続とDWH設定だけでPoCが開始できます。


▼導入・運用フロー概要

ステップ

概要

ポイント

① 要件整理

対象データソース/出力先DWH/更新頻度/ユーザー要件を整理

BI要件やSQL変換の有無をこの段階で検討

② 接続環境の準備

DWH(例:BigQueryやSnowflake)とアカウント、権限設定

ソース側(SaaSやDB)の読み取り権限も確認

③ コネクタ設定(PoC)

Fivetranの管理画面からデータソースを選択して接続

GUIベースでOAuth/APIキー等を入力

④ 同期&初期データロード

初回フルロードが実行され、データがDWHに格納される

時間がかかる場合があるのでスケジュール調整が必要

⑤ データ品質確認

DWH内のスキーマ構成・データ件数・Null値などを確認

SQLクエリやBIで初期チェックを実施

⑥ 運用設計・本番移行

更新間隔の調整、dbt連携、監視・アラート設定を整備

チームや部門単位の権限管理もこのタイミングで設定


▼Fivetran導入時に必要な主な準備事項

分類

具体内容

ソース設定

接続元のアカウント、読み取り権限(例:SalesforceのAPIアクセス)

DWH設定

プロジェクト/スキーマ/書き込み権限(BigQuery、Snowflakeなど)

組織的合意

データ項目の取り扱い、変換責任の範囲(dbt or SQL)

セキュリティ

VPN接続/IP制限/RBACの方針確認


▼実務的なTips

  • PoC期間は最短1〜2週間でも実施可能→ 初期はマーケ系SaaS(Google Adsなど)から始めると効果が見えやすい

  • データ増加に備えて:MAR(Monthly Active Rows)増加を前提とした予算計画を推奨

  • 監視の自動化:Slack通知やメール通知を設定可能(同期失敗・データ欠損など)


▼dbtとの統合ステップ(Transform連携)

Fivetranはdbt(Cloud or Core)と統合可能で、以下のような運用が可能です:

ステップ

内容

1. dbtプロジェクトの作成

DWH上のSQL変換ロジックをdbtで定義

2. Fivetranからのトリガー設定

Fivetran上で「Connector完了後にdbtモデルを自動実行」設定

3. テストとデプロイ

dbtでテスト/バージョン管理し、CI/CDにも対応可能

※抽出〜変換〜可視化までを一気通貫で自動化できます。



  1. まとめと今後の展望


▼本記事の総括

Fivetranは、次世代型のデータ統合ツールとして、以下のような価値を提供します:

観点

概要

高速な立ち上げ

ノーコードで即時にデータ連携を開始でき、PoC〜本番導入までが短期間で完了可能

運用の自動化

スケジューリング・スキーマ変更・差分同期・再試行などがすべて自動化され、保守工数を大幅に削減

モダンスタックとの親和性

dbt・BigQuery・Snowflake・Lookerなどとの相性がよく、柔軟なデータ分析基盤を構築可能

エンタープライズ対応

セキュリティ、SLA、監査機能が整っており、部門横断でのデータ活用にも対応可能


▼今後の展望

Fivetranおよびモダンデータスタックを取り巻く環境は、以下の方向に進化していくことが予想されます:

  • ノーコード × データ基盤の加速

    • エンジニア以外の職種でもデータ統合が進められる時代に

    • 部門主導のデータ活用が現実的になり、「シチズンデータエンジニア」の台頭

  • 変換(Transform)と連携の進化

    • dbtとの統合がより深まり、CI/CDやデータテストを組み込んだ品質管理が標準化

    • 変換後のメタデータ連携・データリネージ(流れの可視化)にも注目

  • マルチクラウド・ハイブリッド対応の拡大

    • 複数のクラウドやオンプレとのハイブリッド構成を支えるConnectorの拡充

    • オープンソースとの共存(例:Airbyteとの併用設計)も現実的な選択肢に


▼導入を検討する企業へのメッセージ

Fivetranは、「スピード・信頼性・スケーラビリティ」を重視したい企業にとって最適な選択肢です。ただし、全てのユースケースに万能というわけではなく、以下のような視点で検討を進めることを推奨します:

  • 自社のデータ量・更新頻度におけるコスト試算(MAR課金)

  • 変換処理を担うdbtなどの周辺ツールとの連携設計

  • データ活用部門の運用体制・スキルレベル


▼さいごに

データ活用はスピードと柔軟性の両立が求められる時代へと進化しています。Fivetranはその「第一歩」を劇的に簡略化してくれるツールです。導入に迷われている企業様には、まず1〜2ソースでのPoCから始めてみることを強くおすすめします。



 
 
 

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